1.活動方針

作成:2012年5月17日  最終更新:2012年12月5日

要約筆記は、「聴覚障害者(特に、中途失聴・難聴者。以下「難聴者」と表記)のための通訳」です。これは、その場の情報が伝わるだけでなく、聴覚障害者自身が自らの意見を述べたり、多数決に加わったりすることが保障されねばならないことを意味します。特に「聴覚障害者の社会参加」という場合は「健聴者のいる社会への参加」であることをよく考える必要があります。

要約筆記者はもとより利用者(難聴者)も、この活動に対し視点・ニーズが多様で、現状では、通訳内容に対する評価基準や、要約筆記者の行動規範が充分に確立されていません。また残念ながら、ときおり「参加が保障されていないのでは」と思われる場合もあります。

まずは、「要約」「要約技術」「ボランティア」「聴覚障害の理解」「制度・法律」などについて、利用者と要約筆記者が、共通の認識と理解を持ち活動していく必要があるのではないでしょうか。

特に、「パソコン要約筆記」に関しては、これまで議論のあった「心か技術か」「連携か単独か」「要約か全文か」という問題を矮小化したものにとらわれず、「三原則を踏まえた、信頼できる通訳か」を、私たちは最大の焦点としたいと考えています。心(気づき)も技術も必要ですし、連携をしなくても大丈夫なだけの実力をつけるのが理想で、要約は、一番厳しい現場であっても一定のレベルの情報を出すために必須な技術です。

また、活動の中には、純粋なリアルタイムの通訳ではない「文字情報の提供」もありますが、構成済みのものへの字幕付与については「将来、発展的に手を引くのが望ましい」ことを自覚しておきたいと思います。制作・構成した人間(会社)が付与することが、あらゆる意味で利用者にとっては望ましい字幕になるからです。

【最終目標】
1)いつでも(→なるべく多くの機会に→要約筆記者数の増加)
2)どこでも(→都市部だけでなく全県下、ひいては全国の難聴者に)
3)常に信頼できる通訳を(要約筆記の質の向上と信用の確立)

【技術的側面(個人として)】
各個人が技術的に目指すべきは、正確な情報を確実に伝える「信頼できる通訳」。
そのために、
 ①要約技術
 ②PCや機材に関する知識
 ③タイピング・変換・確定速度
 ④聴覚障害の理解
という要素が必要である。これらは常に各自が向上を心がける。

【行動指針的側面(団体として)】
さらに、要約筆記を全ての難聴者が「いつでも、どこでも」利用できるようになるには、ボランティアのままでは、人的にも技術的にも限界がある。従って、一部にプロを輩出することを含めた「資格化」および「制度化」を目指すべきである、ということを理解した上で、
 ①聴覚障害者に関する法的背景の学習
 ②ログに代表される著作権およびプライバシーの遵守
 ③派遣現場などでの要約筆記に対する理解要請、協力依頼
 ④情報を扱う者として、説明責任のとれる行動指針の策定
について、団体として一貫した行動をとることを確認していかなくてはならない。

【具体的活動目標】
以上の目標を達成していくため、当面の活動目標として次の各項目をかかげる。
A.学習会の充実
 ・入力した内容の正確性についての検証
 ・現場での活動に関する予習や復習
 ・機材やソフトの新機能学習
 ・福祉や法的な知識
 ・要約表現の蓄積、研磨
B.ML(メーリングリスト)や掲示板を用いた情報交換や学習、(学習会を補完)
C.要約筆記奉仕員養成講座の担当・運営・助言
D.全国要約筆記問題研究会、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会等の大会への参加
E.インターネットやメーリングリスト(ML)による情報収集

※謝礼について(考え方)
活動に対して交通費、謝礼が出されるのは、
 ①活動負担を軽くして多くの人により長く活動してもらうため
 ②要約筆記者のレベルアップに資してもらうため
 ③僻地の利用者にもできるだけ恩恵を受けてもらうため
という意味合いがあるが、受取る側は、謝礼に見合う技術を提供できるよう心がける必要がある。また常に活動内容を検証し、より良い要約筆記の提供を目指す糧とする。


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